広報の大塚です。
先日、僕の職場(日本語学校)で、避難訓練がありました。
その時のことをお話しします。
「地震の時、気をつけること、用意すること」
地震を体験したことがない外国人
防災ガイドマップ
一時(いっとき)避難場所
「地震の時、気をつけること、用意すること」
まず、「地震の時、気をつけること、用意すること」の教材のDVDを学生に見せます。
同様のものがYoutubeにあります。→「地震の時、気をつけること、用意すること」
地震発生時の対応を、アニメの登場人物の行動や発言を確認しつつ、その都度学生たちへQ&Aをまじえて進めます。
学生たちは映像は観てくれるのですが、「地震」の恐怖についてはピンとこないようです。どうも真剣さが感じられません。
大きな地震を体験したことがない外国人
われわれ日本人は、かつて大きな地震を経験しました。
世代や住んでいる地域にもよりますが、われわれは、
阪神大震災
東日本大震災
で、大地震の恐ろしさを体験しました。
僕の勤める日本語学校に通うほぼ全ての学生は、大陸から日本へ来ました。
そのせいか、大きな地震を経験した人が圧倒的に少ないのです。
来日してから2年以内の学生しかいないので、もちろん東日本大震災も体験していません。
唯一、大きな地震を体験しているのは、ネパールから来た留学生です。
2015年にネパールを襲った「ネパール地震」です。→「ネパールにおける地震被害 外務省」
当時の話を学生に聞くと、「とても怖かった。」と真剣な表情で言っていました。
彼らは大きな恐怖を体験しているので、避難訓練の際も、周囲の学生とふざけ合うこともないです。
次に、地震の際に落下物から頭部を守るために、
「机の下にもぐる」
「身の回りのもので頭を押さえる」
などの練習をします。
ですが、「何のためにしているのか。」と現実味を感じない学生が大半です。
火事の場合も想定して、ハンカチで口をおさえるように指示しますが、恥ずかしがって誰もやってくれません。
気持ちは分からないでもないです。自分の学生時代を思い出しても、はずかしながら真剣に避難訓練を行った記憶はありません。
ですが、8年前の東日本大震災時にわが校で被災した学生は、教室内で落下物(エアコン)が頭に当たり重傷を負ったと。先輩の先生から体験談を聞きました。
地震の多発する日本で、やはりこれは他人事で済ませてはいけないのです。
震災時、交通網もマヒし、学校に寝泊まりし、帰宅まで何日もかかった学生も多くいたとのことです。
学生に何とか現実味を持ってほしいと思い、それらの過去の実話を伝えました。
防災ガイドマップ
DVD鑑賞後、多国語で書かれた「防災ガイドマップ」を配りました。
この冊子には、非常時の行動の順番、準備すべき物、自宅の近くの一時(いっとき)避難場所や避難所の場所を調べておく等、大切な事項が書いてあります。
火元を確認する、ドアを開ける、懐中電灯や非常食を準備しておくなどの他に、留学生ならではの大切な注意点が書かれています。
「在留カード」というものがあります。日本国内に中長期滞在する外国人に発行されるものです。当然、留学生は全員このカードを所持しています。
実は、非常時に避難所へ行ったときに、この在留カードの提示がないと、避難所に受け付けてもらえないのです。
ある意味、非常時にはパスポート以上にこのカードが重要になるともいえます。
これはとても大切なことなので、在留カードは常に所持しておくようにと、学生に伝えました。
災害用伝言ダイヤルや、災害用伝言板に関しても冊子に載っています。
ところが、これらは非常時でないと実際に使うことができないので、事前に練習できないのが課題です。
非常時には、通信手段が滞ったり、停電で充電ができずに携帯が使えなくなったりということが起こりえます。
ですがこれらを現実味をもって伝えられたかどうかと言われると、今回は少し自信がありません。
一時(いっとき)避難場所
次に、実際の避難訓練を行います。
学校を出て徒歩数分の一時避難場所まで学生を誘導します。
二列での移動なのですが、列も乱れがちです。遠足気分の学生を律するのも、なかなか大変な作業です。ついつい注意する声も大きくなりがちです。
しかし、学校にいる時間帯に地震等が起きた場合は、実際にこのルートでこの避難場所に避難するわけなのです。そのための訓練なのです。
避難訓練は何とか無事終了しました。
日本語のコミュニケーション能力が低い留学生は、非常時において情報弱者になりがちです。そのための対策をどう考えるのかが、今後の大きな課題だと思いました。
最後に、災害にに情報弱者となってしまう外国人の問題と対策について書かれた記事のリンクを下記に貼ります。ぜひご覧ください。現代の大きな問題のひとつとなっています。